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センター長からのご挨拶

1981年の最初のAIDS症例の報告から36年を経た今日、WHOの推計によると、世界にはおよそ3,300万人のHIV感染者(含むAIDS発病者)がいるとされています。また、今までにほぼ同数の3,000万人がこの感染症で亡くなられたと推定されていますが、これは1918-1919年にかけて世界を席巻したスペイン風邪による死亡者数4,000万人に次ぐものです。しかしHIV/AIDS禍は終息していませんので、いずれスペイン風邪を抜き20世紀以降で最大の感染禍となることは間違い有りません。このようにHIV感染症はまさに私たち人類の生存を脅かす感染症ですが、我が国では一般の方々の関心は総じて低く、新聞やテレビ等での報道もあまりされません。これは我が国のHIV感染者数が先進国の中において最も低く、日常生活の中で感染者と接する機会が少ないことから別世界の事象のように感じているからに他なりません。しかしながら平成27年度にはHIV感染者数は累積2万6千人を越え(エイズ動向委員会報告)、緩慢ながらも確実にHIV感染者数は増え続けており、今後の動向は楽観できない状況にあります。
名古屋医療センターでは感染症科がエイズ診療のブロック拠点として東海ブロックにおけるHIV/AIDSの診療を主導し、臨床研究センターの感染•免疫研究部(名古屋大学連携大学院免疫不全統御学講座)ではHIVの基礎研究をリードするとともに薬剤耐性HIVの全国疫学調査の核として活動しています。このように名古屋医療センターではHIV感染症の臨床と基礎が隣接しており、高度医療の実践と臨床に還元できる研究活動を行える環境を有しています。このような利点を生かして個々の症例に最適な高度かつ先進的な医療を提供し、基礎研究で得られた新たな知見や新規診断技術等の実用化を目指した橋渡し研究を実現するために、平成21年に感染症科と感染•免疫研究部を有機的に統合した「エイズ治療開発センター」を設立しました。尚、感染•免疫研究部は名古屋大学大学院医学系研究科の連携大学院免疫不全統御学講座としてHIVに関連する教育と人材育成にも取り組んでおります。この様に私たち「エイズ治療開発センター」は基礎研究、教育そして治療支援に統合的に取り組むことから、英名称をCenter for AIDS Research, Education and Support (CARES)として、私たちの使命を国内外に明確に示して活動をしていくこととしました。
今、HIV/AIDS研究と治療の世界的な潮流は、これまでは不可能と思われていた「根治」そして「撲滅」という目標に向けて大きく変わりつつあります。私たち「CARES」も世界各国の仲間とともにHIV感染症という人類史上最悪の感染禍を克服するために「CARES」として研究、教育そして治療等の活動を一層充実させていきたいと思います。
エイズ治療開発センター センター長
横幕 能行