臨床工学部

 

臨床工学部の概要

臨床工学技士とは、医師の指示の下に生命維持管理装置の操作及び保守点検を行う事を業とする医療機器の専門医療職種です。当科では、院内の様々な部門(透析室、血管造影室、手術室、集中治療室等)で、医師をはじめとする他の医療職種と密に連携し、チーム医療の一躍を担っており、患者様に安全で安心かつ良質な医療を提供します。また、高度な知識・技術の習得、並びにチーム医療への貢献のため、認定資格の習得に積極的に取り組んでおります。

 

 

主な業務内容

1. 医療機器の保守管理

a)医療機器中央管理業務
病院内の一般的な医療機器や専門機器を集中的に管理しています。具体的には機器の貸し出し・返却、保守点検、修理を担っています。また、機器操作を臨床現場で行う看護師等への教育も行っています。

中央管理により貸出している医療機器1中央管理により貸出している医療機器2
図1,図2:中央管理により貸出している医療機器

管理台数

人工呼吸器 44台
ネーザルハイフロー 4台
輸液ポンプ 343台
シリンジポンプ 173台
経腸栄養ポンプ 25台
生体情報モニタ 8台
肺塞栓防止ポンプ 28台
低圧持続吸引器 34台

 

b)保守管理業務

1)使用中点検
人工呼吸器を使用している病室へ出向き、電源・配管接続、加温加湿の状態、設定、アラーム、用手換気の常備等をチェックします。

2)終業時点検

使用後、機器が返却された際、消毒・点検・消耗品の補充を行い、貸し出し可能な状態にします。

3)定期点検
各機器、年間スケジュールを立て、メーカー推奨の期間・点検内容を順次執り行います。

4)修理
機器の調子が悪く返却された場合、点検を実施し院内で修理可能かまたは外部委託修理が必要かを迅速に判断します。

 

図3:人工呼吸器使用中点検

図3:人工呼吸器使用中点検
 

図4:体外式ペースメーカーの終業点検

図4:体外式ペースメーカーの終業点検

図5:輸液ポンプの定期点検

図5:輸液ポンプの定期点検
 

 

 

2. 医療技術サービスの提供

a)手術室関連業務

図6:人工心肺操作

図6:人工心肺操作

1)人工心肺業務
当院の心臓手術は、心臓外科医師、麻酔科医師、看護師、臨床工学技士らによるチームで治療にあたります。臨床工学技士は医師の指示のもと人工心肺装置の操作を担当しています。心臓手術では、心臓を一時的に止める必要があり、心臓が止まっている間は人工心肺装置で全身の血液循環と呼吸機能を代行します。また安全に心臓を止めて保護するための、心筋保護装置の操作も同時に行っています。これらの人工心肺業務は、2名の臨床工学技士で対応し、安全な体外循環に心がけています。

 

図7:ナビゲーション操作

図7:ナビゲーション操作

2)ナビゲーション業務
医療用ナビゲーションシステムは手術中の患者位置と手術器具の位置関係を表示することを目的とした医療機器のことで、脳神経外科や耳鼻咽喉科、外科等の手術の際に使用されます。臨床工学技士は、手術前に撮影したCTやMRI画像をナビゲーションシステムに取込み、腫瘍や血管の位置関係を見ることができるように装置を操作し設定を行います。2016年度より手術室内で、直接3D撮影して画像を構築し、より精度の高いナビゲーションシステムを導入し画像の構築と操作を行っています。

 

3)手術支援ロボット(Da Vinci)業務
2014年1月より手術支援ロボット(Da Vinci surgical system)を導入し前立腺全摘術や腎部分切除術を行なっています。Da Vinciを用いた手術では、執刀医は3D画面を見ながら遠隔操作でロボットアームを動かし、繊細で正確な手術を行うことができます。臨床工学技士は看護師と共に術前のセットアップやトラブル対応などを行なっています。

ロボット手術装置1ロボット手術装置2ロボット手術装置3
図8、図9、図10:ロボット手術装置

 

b)不整脈関連業務

1)電気生理検査(EPS)、カテーテルアブレーション(ABL)
不整脈の原因の特定を目的とする電気生理検査EPSと、不整脈の治療としてカテーテルアブレーションを行っています。臨床工学技士は心内電位記録装置の解析・記録、体外式刺激発生装置による心内ペーシング、高周波通電装置・3Dマッピング装置等の操作を行い循環器医師のサポートを行っています。

図11:心内電位記録装置の操作

図11:心内電位記録装置の操作

図12:3Dマッピング装置の操作

図12:3Dマッピング装置の操作

 

図13:プログラマー操作

図13:プログラマー操作

2)植え込みデバイス業務
除脈性・頻脈性不整脈に対してのペースメーカー・植込み型除細動器(ICD)・両心室ペースメーカー(CRT)の植え込み手術や定期チェックに携わっています。
臨床工学技士は植え込みデバイスの設定や動作テストを行うプログラマーの操作、測定データのデータベース管理を行っています。
また、遠隔モニタリングを用いて自宅にいる患者さんの日々のデータを確認し、不整脈イベントやデバイスの異常等を早期発見できるよう努めています。
2016年度より導入となった植込み型心電図記録計(ILR/ICM)などの新しい植込みデバイスへの関わりも積極的に行っています。

 

C.心臓カテーテル検査・治療業務

図14:ポリグラフの操作

1)心臓カテーテル検査(CAG)
臨床工学技士はポリグラフにて検査中のバイタル観察と心内圧の測定、シャント率の計算などを行っています。その他に冠血流量比測定(FFR)や心筋生検などの介助も行っています。

 

図15:IVUS操作

図15:IVUS操作

2)経皮的冠動脈形成術(PCI)
臨床工学技士はカテーテル検査同様に治療中のバイタル観察・記録しています。また、血管内超音波検査(IVUS)を操作し、血管径・血管内腔を計測してプラーク性状の解析を行っています。IVUSの計測結果をもとに冠動脈バルーンや冠動脈ステント(BMS,DES)など使用する物品の準備を行っています。
心肺蘇生後や循環不全の際には大動脈バルーンパンピング(IABP)や経皮的補助循環装置(PCPS)の準備・操作・監視も行っています。

 

 

d.血液浄化業務

1)血液透析業務
当院の透析室は6床であり専任の看護師が存在しないため、移動の介助から透析装置の点検まで、幅広い範囲の業務を行っています。透析装置の点検については日常点検に加えて、各透析装置メーカーの研修を終了したMEによって消耗品の交換を行っています。

図16:血液透析室

図16:血液透析室

図17:透析装置の消耗品交換

図17:透析装置の消耗品交換

 

図18:救命救急病棟での血漿交換

図18:救命救急病棟での血漿交換

2)急性血液浄化業務
個人用RO装置を用いて、救命センター等で急性期の血液透析を行うほか、Non renal indication目的のCHDF等、目的に応じた急性血液浄化療法を施行しています。

3)アフェレシス業務
エンドトキシン吸着、活性炭吸着、白血球系細胞除去療法、血漿吸着、血漿交換等を行っています。

 

4)骨髄・末梢血幹細胞移植業務
血液内科疾患の患者に対して末梢血幹細胞移植(PBSC)や骨髄幹細胞採取(BMSC)を実施しますが、臨床工学技士は血液成分分離装置(COM.TEC®)を操作し移植に必要な幹細胞を採取しています。

 

図19:ラジオ波照射術の立会い

図19:ラジオ波照射術の立会い

d.ラジオ波焼灼術
ラジオ波焼灼術とは経皮的手術あるいは外科的手技において、専用の針電極からラジオ波帯の高周波電流を流し、肝悪性腫瘍を凝固する方法です。臨床工学技士は各種設定、出力の調整などの装置の操作を行っています。

 

図20:シュミレーショントレーニング

e.チーム医療活動
当院ではRST(Respiratory Support Team)があり、臨床工学技士もチームの一員として医師・看護師・理学療法士とともに活動しています。
活動内容は主に週に1度、人工呼吸器装着患者に対するRSTスタッフでの病棟ラウンドの実施を行い、安全確認や病棟や医師からの管理の相談・対応、人工呼吸器離脱に向けての提案などを行っています。
また、院内で使用している人工呼吸器の院内マニュアルの作成と定期的な更新も行っています。
院内の人工呼吸器関連の勉強会を定期的に行い看護師への教育も行っています、そのうちの数回を人工呼吸器関連のトラブルを模したシミュレーションによる勉強会を行うことで看護師への実践的な教育も行っています。