研究成果に関するプレスリリース

 

独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター高度診断研究部 安田貴彦室長、真田昌部長、名古屋大学大学院医学系研究科 細胞遺伝子情報科学 早川文彦教授らは、成人B細胞性急性リンパ性白血病(フィラデルフィア染色体(注4)陰性)354症例に対し、その分子病態を明らかにするため、RNAとDNAを用いた網羅的シーケンス(注5)を実施しました。
遺伝子発現情報と遺伝子変異情報を統合的に解析した結果、約85%の症例において18種類の独立した病型に分類が可能となりました。最も頻度が高かったのは、ZNF384融合遺伝子を特徴とする病型(ZNF384病型)であり、全体の約20%を占め、日本人最大病型であることがわかりました。さらに、今までに報告されていない新規の2病型(CDX2-high病型、IDH1/2-mut病型)を発見し、それぞれCDX2遺伝子の高発現とIDH1/2変異が特徴であることを明らかにしました。新規両病型は、小児と比較してAYA・成人に好発し、予後が極めて不良であることから、AYA・成人の急性リンパ性白血病が小児と比べて予後不良である一つの原因になっていると考えられました。
これらの成果により、病型の特徴に応じた最適な治療戦略の確立が期待されます。特に一部の予後不良な病型に対しては、治療成績向上のため、同種造血幹細胞移植(注6)を積極的に実施するなど、治療の強化が必要と考えられます。また、ZNF384病型とIDH1/2病型は、遺伝子変異解析の結果から、それぞれFLT3阻害剤(注7)とIDH阻害剤(注8)に対する良好な薬剤感受性が予想され、今後の臨床応用が期待されます。 

この研究成果は、2021年10月26日に「Two novel high-risk adult B-cell acute lymphoblastic leukemia subtypes with high expression of CDX2 and IDH1/2 mutations」(雑誌名:Blood)オンライン版に掲載されました。
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2021年10月27日