細菌検査室

 

概要

 細菌検査は菌に感染し、発病して感染症になった患者さんから病原微生物を検出し、抗菌薬の効果(薬効)の有無を確認しています。病原微生物にはサルモネラ菌や赤痢菌など食中毒に関与する菌、肺炎球菌やインフルエンザ菌など肺炎に関わる菌などがいます。

 一方、免疫能の低下や抗菌薬の濫用による日和見感染や菌交代症の起因菌検出や薬効なども業務として行っており、年間の検査実績は、一般培養23,500件、血液培養11,000件、抗酸菌検査2,700件でした。

 

細菌検査室で取扱う検体

 患者さんから採取した喀痰、尿、糞便、血液、膿など様々な検体があります。
職員の検便や調理器具などの拭き取り検体も取扱います。

写真 細菌検査室で取扱う検体

 

顕微鏡による鏡検

 細菌検査室で検査している病原微生物は細菌、真菌、寄生虫(原虫)、ウイルスです。細菌検査室の顕微鏡で観察する病原微生物は細菌、真菌及び寄生虫(原虫)です。ウイルスは大きさが数十~数百nm(nmは1mmの100万分の1)で電子顕微鏡でないと形態が観察できないため、通常は免疫学的検査を実施します。

 検体をスライドグラスに塗抹し(塗抹標本)、固定後に染色を行い顕微鏡で細菌、真菌、寄生虫(原虫)、炎症細胞の有無などを観察します。

  • 一般細菌:塗抹標本後にグラム染色を行い鏡検しています。
  • 抗酸菌:塗抹標本はオーラミン・ローダミンを用いた蛍光法で染色しています。
  • 寄生虫(原虫):塗抹法や集卵法を行っています。

※抗酸菌検査はミラー&ジョーンズの分類で品質評価を行っています。集菌法では品質評価に加えて、検体の量も評価します。

写真 顕微鏡による鏡検

 

培養検査

 細菌や真菌の同定や薬剤感受性試験を行うために必要な検査で、細菌検査室の主幹をなす検査です。培養検査に用いる各種寒天培地は愛知県臨床検査値統一化ガイドライン「日常微生物検査における標準手引書」を参照しています。

 

薬剤感受性試験

 検出された細菌が薬(抗菌薬)に対して効果があるかを評価します。近年、抗菌薬の濫用を背景に、抗菌薬が効かない菌(耐性菌)が出現し世界的に問題となっています。主な耐性菌にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)、基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生菌、カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)、多剤耐性結核菌(MDR-TB)などがあります。細菌検査室ではこれら耐性菌の有無を評価しています。耐性のメカニズムはいくつか知られていますが、薬剤耐性遺伝子の獲得や関連する遺伝子の点突然変異などが挙げられます。

写真 薬剤感受性試験

 

イムノクロマト法

 検体中に存在する病原体を特異的に認識する抗体を用いて迅速に検出する方法です。尿中の肺炎球菌、レジオネラ、A群β溶連菌、クロストリジオイデス・ディフィシル(CD)毒素、ノロウイルス、ロタウイルスの検査に用いられます。血清型やウイルスの変異株に対して検出感度が低くなることもあります。

 

結核菌群核酸増幅同定検査(GeneXpert )

 結核菌群を検出する方法の一つであり、入院で抗酸菌塗抹検査が陽性になった喀痰の症例に対して実施します。検査の原理はPCR法(ポリメーラーゼ連鎖反応)によって、結核菌群DNAの検出および遺伝子内の変異を検出するというもので、院内感染防止などに大変重要な検査になります。

 

PCR‐based ORF Typing(POT)法

 MRSAと緑膿菌の院内感染対策の一環として分子疫学的な解析を実施しています。分子疫学とは塩基配列(DNAの並び順)の類似性を指標に菌の相似を解析する手法です。代表的な検査法にパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)法、Multilocus sequence typing(MLST)法などがあります。細菌検査室では簡易に実施できるPOT法を行い、感染管理に貢献しています。

写真 POT法