病理検査室

 

病理検査室の業務は、大きく 組織検査、細胞診検査、病理解剖 に分けられます。 当検査室は技師8名(内細胞検査士4名)で業務を行っています。昨年度の実績は、生検・手術材料6873件、細胞診4790件、術中迅速診断233件、病理解剖5件でした。

 

組織検査

組織検査とは、患者様から少量の組織を採取(これを生検といいます)、或いは手術で摘出した臓器から、組織標本を作製し病理学的に診断を行うことを言います。組織診断は、病理医が行います。

組織標本作製から診断までの流れ

組織検査は手術または生検で得られた組織から、1~7の工程を経て病理組織標本とし組織診断を行います。 また術中迅速診断と呼ばれる手術中に診断を確定する検査8もあります。

  1. 生検・手術材料での組織採取

  2. ホルマリン固定
    ホルマリン固定採取した組織材料は速やかにホルマリンという薬液を浸透させます。
    ホルマリン液による蛋白質の凝固作用により固定された組織は、自家融解を起こすことなく、良好な組織構造が保たれます。(当院では10%中性緩衝ホルマリンを使用しています。)


  3. 組織の切り出し
    組織の切り出し 病理医は病変の位置やその広がり、深達度、切除断端等を考慮しつつ標本にする箇所を選んでいきます。





  4. 包埋(ほうまい)
    包埋(ほうまい) パラフィンというロウの一種に組織を埋めます。この操作は、組織を薄く切るためパラフィン中に埋め込み固化させると上手く切ることが出来るためです。





  5. 薄切(はくせつ)
    薄切(はくせつ) パラフィン包埋した組織をミクロトームという専用の機器で目的に合わせて、1~10μm(1μmは1000分の1mmです)の厚さにスライス(薄切)し、薄切した組織切片をガラスに貼り付けます。





  6. 染色
    染色 一般的には通常ヘマトキシリン・エオシン染色を行います。また必要に応じて、特殊染色や免疫染色等の染色が行われます。





  7. 診断
    診断 病理医が上記工程で作製された組織標本を顕微鏡で観察し、組織報告書を作成します。
    報告書には、病変の有無や腫瘍の種類、広がり、深達度(腫瘍が癌であった場合、どの程度の深さまで癌が浸潤しているか?)、切除断端に癌がないか(癌が取りきれているか?)、脈管(血管,リンパ管など)に癌が浸潤していないか、リンパ節への転移の有無など、多くの所見が詳細に記載されています。

  8. 術中迅速診断
    術中迅速診断 手術中に行われる検査で、組織を凍結させて、クリオスタットと呼ばれる専用の機器で薄切し、ヘマトキシリン・エオシン染色を行い、良悪性の有無が診断され、手術室へ報告されます。

 

 

細胞診検査

細胞診検査とは、喀痰や尿、腹水といった生体より採取した検査材料(検体)から、細胞診標本を作製し細胞学的に診断を行うことを言います。
細胞診検査は、臨床検査技師(細胞検査士)が行いますが、悪性の疑いがある場合などは、病理医が最終診断を行います。細胞診断検査は、細胞一つ一つを顕微鏡で観察し診断を行う検査です。
一般的に、組織検査に比べると生体に対しての侵襲が少ないので、組織検査に先立って行われることがよくあります。

細胞診標本作製から診断までの流れ

細胞診断検査で扱う検査材料(検体)は生体から採取される様々なものが対象となります。代表的なものに、子宮頸部や膣部、喀痰、尿があります。
また内視鏡(気管支鏡検査・胃・腸・膵・胆管)検査時に組織と同時に採取したり、穿刺材料といって乳房やリンパ節、唾液腺、甲状腺などに細い針を刺して、直接細胞を採取することがあります。そのような侵襲の高い検査には細胞検査士が立ち合い、細胞の有無を確認することもあります。腹水や胸水、髄液も体腔に穿刺を行って採取します。
得られた検体は以下の工程1~4を経て細胞診標本とし、細胞診断を行います。

  1. 検体処理(例:肺癌細胞を検出する場合)検体処理(例:肺癌細胞を検出する場合)
    検査材料(喀痰)をガラスに塗抹します。



  2. アルコール固定
    組織に対して細胞診はアルコールで固定されます。ガラスに塗抹した検体は速やかにアルコールの中に浸されます。乾燥させないよう素早く行うことが重要です。

  3. 染色アルコール固定
    通常パパニコロウ染色を行います。染色液には5種類の色素が含まれ、細胞の種類ごとに色分けできます。その他にギムザ染色や特殊染色などがあり、必要に応じて実施します。



  4. 鏡検(スクリーニング)鏡検(スクリーニング)
    染色された標本を顕微鏡で観察し、悪性細胞や病原菌、炎症の有無を検査します。


  5. 診断
    細胞検査士が細胞を見て検査を行います。
    細胞検査士とは、細胞診検査を行うために専門の認定資格を有した臨床検査技師です。
    悪性の疑いがある細胞は病理医が最終診断を行い、細胞診報告書を作成します。

※市区町村で行われる子宮癌検診や肺癌検診で、細胞診検査が行われることがあります。

 

病理解剖

 病態究明を目的としており、死因や病気の原因を調査し、臨床経過と死後の臓器所見との関連付けを行います。
また、解剖させていただいた症例についてはCPC(病理・臨床カンファランス)を開催し、教育にも重要な役割を担っております。