消化器がん(胃・食道・大腸・肝胆膵)

消化器がんは消化器外科・消化器内科と連携し、局所進行がん、進行がん、術前後の補助療法の治療を担当しております。

  • 術後胃がん:ステージII-IIIの場合、術後補助療法を行うことで再発のイスクが軽減できることがわかっています。従来のS-1内服療法の他、S-1+オキサリプラチン(SOX療法)、カペシタビン+オキサリプラチン(CAPOX療法)、S-1+ドセタキセル療法(DS療法)の中から、進行度や体調に応じて提案しております。
  • 局所進行胃がん:初診時に手術が難しいと判断された場合や少数の遠隔転移がある場合には、導入化学療法を開始し、治療効果に応じてその後の切除や治療方針を検討する考えたがあります。SOX療法の他、欧米で汎用され腫瘍縮小効果の高いフルオロウラシル+オキサリプラチン+ドセタキセル(FLOT)療法や腫瘍のタイプによっては分子標的薬も取り入れています。
  • 進行・再発胃がん:治療の主軸は十分な体調ケア+薬物療法です。HER2、MSIとよばれる因子を検査して治療薬を検討します。
     薬物療法は抗がん剤、免疫チェックポイント阻害薬、分子標的薬(トラスツズマブ、トラスツズマブ・デルクステカン/エンハーツ)などがあります。2021年末よりHER2陰性タイプの方には抗がん剤+免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ/オプジーボ)が治療の第一選択になりました。
     抗がん剤治療は一般的なSOX療法以外にもS-1+シスプラチン療法、CAPOX療法、FOLFOX療法も取りいれています。FOLFOX療法はオキサリプラチンの投与量が少なく、短期間で薬剤投与が完了し、点滴薬のみで構成されているため、病気や体調で内服薬が適さない、体調が十分ではない胃がんや食道がんの方に積極的に提案しています。
     HER2陽性タイプの方には抗がん剤にトラスツズマブを併用しています。2020年にトラスツズマブ・デルクステカン(エンハーツ)が登場し、HER2陽性胃がんの治療が飛躍的に進歩しました。
  • 食道がん:食道がんは遠隔転移や病気の広がりに応じて手術、化学放射線療法、薬物療法主体などが選択されます。薬物療法は手術の前後や放射線治療と併用して、進行・再発時など幅広く使用されています。内視鏡医、外科医、腫瘍内科医、放射線治療医などの連携、栄養療法・支持療法が重要であり、専門医と十分な施設が必要な疾患です。
     抗がん剤は一般的な5-FU+シスプラチン(FP療法)の他、患者さんの状況によってはFOLFOX療法も使用しています。手術前に行う化学療法にはFP療法のほか、より強力なDCF療法も選択肢であり体調や年齢に応じて使用が可能です。
     化学放射線療法はFP療法もしくはFOLFOX療法と併用しています。FP療法は入院が必要ですが、FOLFOX療法は2回目からは通院での治療が可能です。
     2020年に免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ/オプジーボ、ペムブロリズマブ/キイトルーダ)が承認され治療の幅が広がりました。進行・再発の場合には、抗がん剤+免疫チェックポイント阻害薬による治療が一般的になりました。
     手術の前に行われる抗がん剤治療はFP療法の他、より高い効果が報告されているシスプラチン・5-FU・ドセタキセル(DCF療法)も選択肢です。DCF療法は副作用対策が特に重要となります。手術の前に放射線治療を行うこともあります。2021年より、術後に免疫チェックポイント阻害薬を投与する方法が登場するなど食道がん治療にも進歩が見られます。
     局所進行(手術が難しいが遠隔転移がない、限られている状況)の場合には食道がんではFP療法、FOLFOX療法の他、による強力な化学療法(DCF療法)、導入化学放射線療法を使用することがあります。
  • 大腸がんの周術期周術期補助療法:一部のステージIIとステージIIIは術後補助療法の有用性が判明しています。カペシタビン内服、UFT/ロイコボリン内服の他、カペシタビン+オキサリプラチン療法も有効です。いずれの選択がよいかは、ご病気の状況や体調、副作用に対する考え方で千差万別です。また、局所進行直腸がんに対しては適応や意義を外科と共有しつつ、術前化学療法・化学放射線療法を組み合わせた集学的治療を実施することがあります。
  • 進行・再発大腸がん:SOX療法、S-1+イリノテカン療法、CAPOX・CAPIRI療法、FOLFOX・FOLFIRI療法、FOLFOXIRI療法などから選択されます。少しずつ副作用の特徴が異なりますのでお話を聞きながら決定しています。これらの抗がん剤に血管新生阻害薬(ベバシズマブ/アバスチン、ラムシルマブ/サイラムザ、アフリベルセプト/ザルトラップ)または抗EGFR抗体(セツキシマブ/アービタックス、パニツムマブ/ベクティビックス)を併用します。精密検査(マイクロサテライト不安定性、RAS遺伝子変異、BRAF遺伝子変異、HER2過剰発現の有無など)を行い最適な薬剤選択を検討しております。MSI検査で陽性と判断された場合はペムブロリズマブ、ニボルマブ・イピリムマブ、HER2陽性(かつRAS野生型)の場合は、トラスツズマブ・ペルツズマブなどが使用されます。
  • 膵臓がんはゲムシタビン・ナブパクリタキセル療法、FOLFIRINOX療法、S-1、ゲムシタビン単剤療法があります。二次治療でリポゾーマルイリノテカンが使用可能となりこれまでより治療の幅が広がりました。BRCA遺伝子変異の状況によってオラパリブ/リムパーザ療法が選択肢に加わりました。治療開始時に切除不能な場合も状況(腫瘍のサイズや部位など)と薬物療法の効果によって切除可能になることがときにあります。当院には薬物療法の専門医と膵臓・肝臓外科の専門医がともに在籍しており、綿密に連携しつつ治療を計画しています。
  • 肝細胞がんの治療は手術、ラジオ波焼灼療法、血管内治療、放射線治療の他、薬物療法があります。薬物療法の選択肢が近年増えつつあり、免疫チェックポイント阻害薬+血管新生阻害薬(アテゾリズマブ/テセントリク+ベバシズマブ)療法、レンバチニブ療法の他、2022年にはデュルバルマブ+トレメリマブ療法(2つの免疫チェックポイント阻害薬を併用する治療法)が加わりました。その他、レゴラフェニブ/スチバーガ、ソラフェニブ/ネクサバール、ラムシルマブ/サイラムザなどを使った治療もあります。いずれの治療が最適かは消化器外科・消化器内科、血管内治療の専門医らと相談のうえ、計画していきます。薬物療法に加えて血管内治療を併用する場合、放射線治療を組み合わせるなど多面的な角度で検討します。
  • 胆のうがんの薬物療法は補助療法の他、進行・再発時に行われます。シスプラチン・ゲムシタビン療法、S-1療法が中心となります。2022年にシスプラチン・ゲムシタビンにデュルバルマブを併用する新たな治療が加わりました。海外ではFOFLFOX療法も取り入れられているようです。ときに遺伝子検査で治療薬がみつかることが知られており、可能であれば積極的な検査をおすすめしています(FGFR遺伝子変異など)